偶然あなたの探偵小説を読んだ

さきにも申したように先生の小説には常に法律上の挙証の問題が取り扱われています。法律上罰せられないように、人を殺すには直接の証拠を残さなければいいという事です。法律にふれても、実際上罰せられぬように殺せという事です。

私は先生の小説を凡て読みました。そうしてその中から一つの確実な何物かを掴んだのでした。
それは丁度この一月のはじめでした。私は寒い雪の間、ひろ子殺害の方法を研究したのでした。如何にしてひろ子を殺すか。あなたは私がどうやったと思われますか。
私に直接のヒントを与えたのは、あの頃、私の住んでいるA県下一体を襲った猛烈な悪性の流行性感冒だったのです。私のつとめていた小学校の生徒が、毎日一人位ずつの増加率を以て休みはじめたのでした。そうして当歳や二歳の児がたちまち肺炎になって死亡して行くという事が、私の近所でもはじまったのです。私はこれをきいた時、全く時来れりと感じました。
一月の或る寒い日でした。外には吹雪が荒れて、下には四寸位の雪が積っています。
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