いきり立っている

十郎兵衛は内心見極めをつけてしまったが、それかといって、そう言いきるには、まだ充分の自信がなかった。ことによると、とはじめ自分の頭へ来た、そのことによるとがいざとなると一抹の不安を投げるようでもある。

甚吾左衛門に対してはもちろん、きょうの今までの自分の見巧者の手前もここはなんとかぜひ一言なかるべからざるところだ。第一ぐずぐずしていて他の者に一の当りを取られてはかなわぬ。直感とでも言おうか、一ばん先に心に浮んだのを吐きだして大過ないどころか、たいがいそれが的中していることは今日の成績が立派に証明している。よし、一か八か、一つぶつかってやれ――こう十郎兵衛がしっかり肚をきめる前に、かれはいかにも確信ではちきれそうに、逆心のあるところを掴まえて、これは青江ものでござる、なんかと鹿爪らしく並べ立てていたのだ。ちょっとおかしかったが、彼としても一生懸命、骨の高い肩を無理にも張って見せなければならなかったくらいである。
武蔵野市 歯医者