長職のほうが成善派

すべてにおいて二点だけ甘かったものだ。
こういうわけで、天狗連が点取りを争うのだから、ともすれば荒っぽくなる。
しかも今日は若侍のよりあい。どういうものか、はじめから寺中甚吾左衛門に旗色が悪くて、

よりもいつもの甚吾にも似ず、言うことが片っぱしからどじで、取った点も列座の面々とは桁ちがいと来ているので、甚吾の心中、はなはだ穏かでないものがある。それにひきかえ、安斎十郎兵衛の指す星は、毎度見事に的中して、安斎が甚吾に反対するたびごとに、安斎は奇妙に一の当り二の当りという点のいいところを重ねて来ている。殺気などというほどのことでもないが、二人のあいだにいささか変なこだわりが流れ出していることは事実だ。
さて、いま出された刀だが、寺中甚吾左衛門はあくまでもこれを粟田口藤原国光の作と言い張っている。その理窟を聞いてみるとまんざら根拠のないものとも思えないが、およそこの席につらなっている者で甚吾が示した刀剣の智識ぐらいは誰でも持っているのに
阿佐ヶ谷 歯医者