何か不思議なものを見出さなかつた

私は別に妙なものは発見しなかつたけれども、初江が入浴中、さきに木沢医師にもらつたらしい散薬をのんだ形跡を認めた。すなわち浴槽の外、流し場の横に濡れたパラフィン紙が捨てられてあつた。

「さつき木沢氏に渡して、その紙を調べてもらつたが、たしかに木沢氏が渡した健胃剤の一包らしい。なお彼女の着衣の中から残りの散薬が出て来たから全部(二包)木沢氏から野原医師に提出してもらつた」
林田の供述はこんなものだつた。この薬の点は私の今まではつきり知らぬ所だつた。
警部はそれから駿三、ひろ子、さだ子、伊達に対してかなりえんりよなく訊問をこころみた。事件当時の彼らの行動について調べたのである。
ひろ子の行動は既に読者の知れる通りだ。
さだ子はずつと二階で林田に警察の事を物語つていたと語つた。
駿三はこの日気もちが悪く、午後は木沢氏の処方にかかる鎮静剤の効果で、ずつと床の中にいて、ひろ子によび起されるまで何も知らなかつたと述べた。

 

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