するとドアに鍵をかけて

もどるやいなや恐ろしい形相になつて(ほんとうにあの恐ろしい顔は今でも目さきにちらついておりますが)いきなり私にとびかかつて両手で私ののどをしめたのでございます。私は余りのおそろしさに、悲鳴をあげたことまでは

おぼえておりますけれども、あとは全くおぼえがありませぬ
語り終つて、彼女はほんとうに恐ろしかつた、という様子をした。
きく者一同、ただ固唾をのんでじつと耳をすましていた。
「そうですか。それで大抵わかりました。つまり僕らの来方が間に合つてよかつたのです。彼はわれわれの足音をきいて最早万事休したことをさとり、かねて用意の毒をのんだのでしよう。首をしめられて未だ幸いでしたよ。あの紅茶をのんだら、今頃はもう死体となつているところだつたでしよう。さてと、僕はもう少しさだ子さんとお話したい。木沢さんにはそばにいていただきましよう。高橋さん、あなた方はどうか御遠慮なく、林田の死体の方の始末をなさつて下さい」
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