藤枝にその見込みをきいた

全く判らん。あてもつかない。警察のような権力をもつていないのが残念だよ。あいつをもつと厳しくせめなけりや第一方針が立てられん。しかしもう一日待ち給え。明日の、そうだ、夜になればいくらかはつきりするだろう

彼は苦り切つて答えた。あいつとは誰だろう。
これは後になつて聞いたことだが、検事は十八日一通り皆を調べた所から、伊達正男、さだ子、佐田やす子の三人に特に目をつけたらしく、その命を受けた高橋警部はこの三人に任意出頭の形をとつて警察に出頭させ、しきりと取り調べたのであつたが、何ら確証を掴まず、ことに佐田やす子にはかなり烈しく当つて見たのだがやはり、これという所が判らず、右に述べた通り、一人の被疑者も拘引されずに二十日となつたのである。
ただこの時分は新聞で例の過失死事件を報道した為、世人も怪まず、警察及び探偵に対する非難は少しもおこらなかつた。
さて、さきに云つた通り四月二十日の午後、質素な葬儀が行われた。
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