いとまをつげて去ろうとする

これから私が度々お宅に伺いますから、あなた御自身は余りこちらに出かけぬ方がいいと思います。世間がうるさいですからね。なるべくなら今度の事件も新聞などに載らぬ方がいいですから
とやさしくさとしていたが私の方を見て云つた。

「君また御苦労だがお送りしてくれないか」
そこで私はきのうと同様、タクシーをよんでひろ子をその家の門まで送つたが、今日は是非上つて茶でものんで行けと云われるのを断つて、いそいでまた藤枝の事務所に戻つて来た。
「オイ。いよいよグリーン殺人事件になつて来たね」
私は彼の興味をまたひくために帰るといきなりこう云つて見た。
「うん、似た所もあり、大いに違つてる所もありだよ」
意外にも彼はこの話題には全く趣味がなくなつたらしく、ものうげにこう云つたのみであつた。
さきに述べた通り、これが四月十八日の出来事で、この日はこれ以上何も記すべきことはなかつた。
翌十九日早く大学で死体解剖があり、死因はまさに昇汞をのんだためと判つた。
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